「カズシさんがプロ契約したって聞いたよ」
友人の一人が言った。
「日本でもプロリーグができればいいのに」
周りの仲間がそう言った。
「もっとサッカーを見に来てくれる人が増えたらな…」
皆が頷いた。
それから数年。
Jリーグ発足が発表され、チームが決まり、92年にナビスコカップが行われた。
何故か急にチケットが取れにくくなった。どこから沸いて出たのか判らないほど、観客が増えた。応援のスタイルが変わった。
それより何より、眼下で行われているサッカーが今までと違う。スピードが違う。
いよいよ、プロリーグが始まるのだ。 そんな気持ちがこみ上げてくるような試合だった。
5月15日 国立競技場。
いつも応援している側とは逆のゴール裏に私はいた。周りは相手サポばっかりかと思ったら、そうではなかった。似たような境遇の人や、話題性があるから来てみた、という人が多数いたのだろう。
指定された席にはお土産がおいてあった。袋に入った数点のお土産。今でも家の戸棚に入っている。
競技場が暗くなり、テーマ曲が流れてくる。スポットライトがあたる。
何年も待ちわびていた、Jリーグの開幕である。
視界がうっすらと曇った。胸が熱くなった。
今、私はその頃とは違うチームをサポートしている。
その時に応援していたチームと、今週末、国立競技場で対戦する。